【玩具の小売業の原価計算】消費税増税で泣くのは常に弱者である個人商店

今回は、タイムリーな時事ネタです。消費税が増税する事は周知の事実と思いますが、ここで2つおさらいをしましょう。

①消費税に関する税制改正で、現行5%が平成26年4月~8%、平成27年10月~10%に段階的に引上げられます。
②大手業者が消費税の価格への転嫁を拒んだりすること等を禁じる法案が4月12日、衆院本会議で審議入りしました。
 
何故このような法案が出来上がったのか?その狙いは、中小零細企業の原価に増税分が上乗せできない『下請けイジメ』を防ぐことです。

それでは、具体的にどのような影響があるのか見てみましょう。

【事例】玩具の小売業(零細企業)
 ※プラモデル部門のみ抜粋。文中の金額は全て消費税込。

当社は、プラモデルを卸問屋から定価の35%OFFである682円で仕入れて、定価の1,050円で店頭販売していました。しかし、大手玩具屋では定価の30%OFFが当たり前になっており、ここ数年は当社も735円で販売しています。店頭販売の儲けは定価の5%です。なお、当社はあるサイトにネット店舗を出店し、ネット販売も実施しています。その出店料等は定価の5%であり、実質儲けはありません。
ここまで見るとプラモデルの小売業は儲からないように見えますね。しかし、ネット販売の送料を高く設定しているとしたらどうでしょう。運送業者と契約しているため実際の配送費は安く済みます。「1品で送料1,000円、一括購入でも送料据置。」このような文字を見たことありませんか?ネット販売の送料で大きく利益があがるため、人件費と店舗家賃等の固定費を吸収出来るという構図です。
 では、消費税が増税し8%になった場合にはどうでしょうか。モノを仕入れないと売上が計上出来ない業種の性質上、卸問屋が増税分を価格に転嫁して702円となっても買うしかありません。しかし、大手玩具屋が卸問屋の増税分を拒んだら?大手だけ682円で仕入れるため販売価格は以前と同じ735円が設定可能です。こうなると当社も735円で販売する他ありません。つまり、増税分が価格に転嫁できず、原価に算入されてしまいます!運送料にも消費税が転嫁できなければ、影響額は膨らむいっぽうです。

 今回は小売業を例に消費税増税の影響を説明しましたが、文中に出てきた卸問屋が大手メーカーから増税分の価格転嫁を拒まれたのがまさに『下請けイジメ』です。この影響が下請けだけで留まらない。ということが今回の事例で一番お伝えしたかった事です。
消費税が導入されて四半世紀。一部の中小零細企業では既に消費税を価格に転嫁できていないと聞きます。消費税が増税されて価格転嫁が出来ない=原価増だとしも、経営は耐えられるのか?自社の原価環境を整備し、来たるべき増税に備えましょう。(文:和田仁支)

【ケーキ屋の原価計算】ケーキが並ぶ棚にだって家賃払ってるんだから、売れ残りが一番高コストでしょ?

今回は、ケーキ屋さんを覗いてみましょう。その中でもアップルパイの原価に着目し、原価計算の基礎を学びます。

原価とは、人、モノ、設備等の消費をお金に換算したものでしたね。その発生形態によって分類すると、材料費・労務費・経費と言う3種類の基礎的な原価に分ける事が出来ます。また、製品の製造に要する原価を製造原価、製品の販売に要する原価を販売費、製造にも販売にも分けられない管理費(社長の給料等)を一般管理費と呼び、すべてを合計すると総原価。総原価に利益を加えれば、売価となります。

それでは、アップルパイをお店で初めて1ホール製作し、ショーケースに入れて2日後に販売された場合の原価はどのように考えるのでしょうか?

まずは製造原価です。23㎝のアップルパイを市販のレシピ通りに製作すると材料費は約1,300円。労務費は社員の時給を1,250円、材料の購入~片づけまでの時間を2時間とすれば2,500円。これに加えて経費の水道光熱費等が400円だとすると、製造原価は驚愕の4,200円!

製造後2日間ショーケースにあったという事は、その占拠していた部分の店舗家賃・光熱費等は2日分負担すべきですね。これは販売するために要した費用なので販売費です。ショーケースに1日(24時間)陳列すると100円の費用が発生すると仮定して販売費は48時間分の200円。本来なら社長のお給料も含めないといけませんが、ここまでの費用を合計すると総原価は4,400円!!ここに利益を20%乗せると売価は5,280円。高付加価値なアップルパイなら売れるかもしれません…。

よく原価計算というと製造原価計算の事と認識している方もいますが、総原価まで計算して初めて利益が出ているか分かります。製造原価は目に見えやすいので計算し易いかもしれませんが、目に見えないコストをいかに含めて考えるかが重要です!販売後のアフターフォローが発生する業種はそこも考慮するべきです。

特に保管コストは度外視してしまいがちですが、長く保管するほど原価増です。銀行の利息は増えたら嬉しいですが、これは全くの逆です。預金残高を確認するように原価も一目で確認出来ればそのリスクに気付くハズ。原価計算の基礎、重要性が理解頂けましたか?(文:和田仁支)

【塾の原価計算】間接経費の考え方。いつ見るの?今でしょ!!

今回は、サービス業の原価計算です。塾の小学校5年生クラスの原価計算を覗いてみましょう。

仮に進学塾「和田塾」があったとします。塾の概要は以下の通り。①講師:社長1人、正社員2人、アルバイト3人②対象学年:小学校1年生~6年生。5年生クラスの運営については週4日、5時間(月4週とした場合の月間授業時間は80時間)、担当講師は4日とも時給1,500円のアルバイト、月謝は3万円、生徒数は30人、テキストは毎月800円の外部教材を使用しています。

原価計算の第一段階は費用を材料費、労務費、経費に分けるところから始まります。塾の諸費用としては家賃、PC・複合プリンターのリース代、通信費、水道光熱費、広告宣伝費、テキスト代、講師賃金、アルバイト代、雑費といったところでしょうか。塾に材料費はありませんので、労務費と経費のみという事になります。

このクラスだけにかかる経費としてはテキスト代があります。このように直接認識出来る経費を直接経費と呼びます。その他の経費は塾の運営にかかる全体の費用であり、このクラスだけに直接認識出来ません。このような経費を間接経費と呼び、一定の基準で配賦計算します。しかし、間接経費の実際額配賦は以下の点から実務上望ましくありません。①工数がかかり計算が遅れる。②偶然生じた費用が全て計算結果に反映される。そこで、間接経費については実際額を配賦するのでは無く、正常額(予算額)を配賦します。つまり、年間を通じて常に一定の正常配賦率を使用することとなります。年間の間接経費予算÷同期間の予定総直接時間(授業時間)で間接経費の正常配賦率を設定します。

今回の配賦基準は授業時間です。夏期講習等の季節変動を考慮して計算した和田塾の正常配賦率は4,500円でした。間接経費は80h×@4,500円=360,000円。労務費はアルバイトの時給をそのまま使用して計算すると80h×@1,500円=120,000円。直接経費はテキスト代30人×@800円=24,000円。総原価は504,000円です。月謝は総額90万円なので黒字ですが、ここで注意すべきは労務費をアルバイト時給で計算したことです。社長と正社員の給料まで考慮すると別に賃率を設定する必要があります。それはまた別の業種でご紹介します。

間接経費の計算は予算を使用することで原価を素早く見る事が出来ます。経営の意思決定にはスピードも重要なので、実務的な考え方と言えます。(文:和田仁支)

【建設業の原価計算】マイホーム建てると25%は業者の利益?物件毎の把握では不十分。

今回は、建設業の原価計算です。その中でも注文住宅を取り上げます。

仮に木造二階建ての新築住宅を中小工務店が建築するとしましょう。注文住宅の原価計算は、個別原価計算です。

個別原価計算とは、その名の通り個別で原価を集約する計算方法です。業種としては、受注を受けて製品を個別に生産するような建築業、機械製造業、造船業等に使用されます。受注毎に個別で原価を集約するので、費用の見える化という意味では非常に見えやすく、利益が出ているか一目で分かります。

この新築住宅の建築に必要な費用は、設計料、木材・断熱材等という基本的な材料費から、システムバスや火災警報器等の設備費、水道や電気を引き込む費用、完成見学会の諸費用、建築士の労務費等となります。建設業界では、粗利段階で25%というのが一つの指標です。中小工務店では30%を目指していると聞いた事もありますが、この業界指標を守っていれば大丈夫かというとそんな事はありません。ここに個別原価計算の怖さがあります。

先にも説明しましたように個別原価計算は費用も利益も見えやすい原価計算です。建設業の実務的には、粗利25%になっている見積原価を算出し、原価を積上げ、実際原価段階では粗利26%という近似値になる事も珍しくありません。ここで忘れてはいけないのが粗利からは営業、総務、社長の給料が控除される他、営業車の費用や、事務所の家賃等の多額の固定費も控除されます。つまり、粗利率目標の前に固定費を吸収できる程の売上高が必須なのです。

いくらの売上があれば固定費を吸収出来るか?この売上高を損益分岐点売上高と呼びます。売上高が著しく減少するようであれば粗利率目標は高くなって当然です。業界の指標だからと目標を設定し、そこを目指せば業績が良くなると思うのは大きな勘違いです。今まではその指標が大きく外れる事は無かったかもしれませんが、経済のスピードは加速しています。過去に囚われず、自社の現状と業界の動向を鑑みて目標を設定する必要があります。個別原価計算であれば尚更その線引きが重要です。是非、この機会にこの先5年間の損益分岐点売上高を並べてみてください。
(文:和田仁支)

【喫茶店の原価計算】400円の珈琲の原価は40円!?それでも苦しい喫茶店経営

今回は、喫茶店の原価計算です。ちなみに「喫茶店」と「カフェ」の違いをご存知でしょうか?食品衛生法で区分をすると喫茶店は、“喫茶店営業”カフェは、“飲食店営業”です。喫茶店営業とは『酒類以外の飲食や茶菓子を提供する営業』なので、今回の題材となる喫茶店にはアルコール関連のメニューが無いという事です。

喫茶店の原価計算の「原価」とは一般的には「材料原価」を指します。先に結論を記載しますが、喫茶店の原価率は30%が目安です。なお、喫茶店で出す珈琲の原価は豆代と砂糖やミルク等を含めても40円程度というのが一般的。400円の珈琲で原価率10%なら喫茶店は儲かる!と感じた方、そう簡単ではありません。もう少し広い視野で考えてみましょう。

400円の珈琲が1日100杯、20日売れて売上は80万円。売上-材料費の粗利益は72万円。ここから家賃、水道光熱費、消耗品、銀行への返済等を差し引くと、手元に残るお金は雀の涙です。愛知県は全国的にも珍しくモーニングサービスがあるので、赤字の可能性もあります。いくら原価率が低くても単価が安いので最終的な利益は少なくなるのです。

そこで、喫茶店では、各種料理も提供する事になります。先に記載した目安となる原価率30%とは、珈琲のように低い原価率もあれば原価率の高いフードメニューも混在し、平均した原価率が30%になるという事なのです。

しかし、喫茶店の原価は変動します。珈琲豆が不作な年もあるでしょうし、野菜が高騰する事もあります。原価率の変動がすぐ売価に転嫁出来れば問題ありませんが、頻繁に価格改定は出来ません。そこで付加価値という原価変動のクッションを売価に組み込む事になります。この付加価値は、簡単に表現すれば他店には無い要素です。例えば、料理人をカウンター越しに見えるようにし、調理中のパフォーマンスが凄い!等です。人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)で物を食べて「美味しい」と感じさせる感覚の割合が一番高いのは、実は「視覚」です。約70%もの割合だそうです。視覚効果で美味しそう!と感じさせれば、料金が高くとも納得する。という事です。1杯の珈琲が千円でも売れる付加価値をつける事が出来れば、原価高騰の影響も軽微で済みます。反対に付加価値が少ない珈琲は400円でも高く感じます。

原価率30%はあくまで目安です。いかに付加価値を高め売価に転嫁し、客足を途絶えさせない工夫をするか。これが出来る自信があれば是非、喫茶店をオープンしてみてください!(文:和田仁支)

【会計事務所の原価計算】全国のコンビニ数の半分もある会計事務所の原価って何?

今回は筆者の業界である会計事務所の原価計算です。一般の方には馴染みが薄いかもしれませんが、平成24年の税理士事務所及び公認会計士事務所数は、全国で約3万事務所(経済センサス活動調査)です。同じ時点のコンビニエンスストアの店舗数は約4万8千店舗(経済産業省商業動態統計調査)。なんとコンビニエンスストア店舗の半分超が会計事務所となります。もう少し身近に感じて欲しいものです…。

そして、会計事務所1事業所当たり企業数の全国平均は131件。従業員1人に対する顧客数を仮に30件とすれば、会計事務所で顧客対応をしている人数は約4人です。顧客対応をしている従業員(総合職)が4人、営業兼経営をしている所長(社長)が1人、サポート(一般事務)が1人。この6人というのが会計事務所のモデルケースでは無いでしょうか。

会計事務所の売上となる報酬は、大きく分けると次の5つに分けられます。顧問料、決算報酬、税務相談料、記帳代行料、その他、です。では、その費用は何か考えてみると、基本的に人が商品です。労務費及び家賃で7割以上を占めると考えられます。原価計算を実施するうえで労務費は、賃率×時間で求めます。

しかし、賃率にも複数種類が存在します。一人一人個別に計算するか平均を採るかによって個別賃率と平均賃率に分かれます。平均賃率は職種別平均賃率(職種毎の平均を採る)と総平均賃率(全体の平均を採る)に分かれます。そして、賃率には実際賃率と予定賃率の二種類があります。実際賃率は、原価計算期間の実際の賃金支払高に基づき算出します。予定賃率は、期首に当該会計期間の賃金支払高と同期間における就業予定時間の合計を見積もり、予定賃金支払高合計を予定就業時間数合計で除すことで算定します。実務的には予定総平均賃率又は予定職種別平均賃率が多いと感じます。予定賃率を使用する理由として、実際に支払われた給与で計算すると賞与支払い月の原価がすべて高くなってしまう等、突発的事由の影響を受けてしまいます。また、給与の確定を待たずに素早く算出出来るため、経営の意思決定を行ううえで適しています。モデルケースの予定総平均賃率は、総合職、一般職、社長全員の平均賃率となるので、その会計事務所の従業員誰でも1時間働けば同じ労務費が発生しているものとして考えます。売上が発生する顧客対応をしている総合職が他の方の労務費も負担しているような考え方です。

私的には、営業職の責任の重みを示す指標としては適していると思います。クレーム対応時間に対する機会損失をこの賃率で算出すれば、会社にとっていかに自分の行動が不利益となるか一目瞭然です。職種別平均賃率は総合職4人の平均賃率、一般職、社長各々の賃率となるので、職種別の労務費に差が出せます。様々な職種が在籍するような部門別の評価には適しています。

賃率については、会社環境によって何を採用すれば良いのか異なります。職種別平均賃率を採用すれば、比較的高齢な部署は原価が増えます。ウチに若い人材をよこせ!と叫ぶ部長が出て来るかもしれません…真実の原価を追い求めるあまり、社内に不協和音が響いては本末転倒です。よく考えて設定してください。(文:和田仁支)

【美容院の原価計算】巷に溢れる1,000円カットが既存の美容院よりボロ儲けって本当?

今回は、2種類の美容院を取り上げます。

有名な話ですが、美容院の数はコンビニの店舗数よりも遥かに多く、コンビニの店舗数が平成24年で約5万店舗に対し、美容院はなんとその5倍近い約23万店舗です!また、毎年10,000店の新規出店、8,000店が廃業する業界でもあり、毎年2,000店舗も純増しているため店舗毎の売上は減る一方です。そんな中、ここ数年で美容院は昔ながらの美容院(以下、美容院)と、新市場の1,000円カットのような低価格美容院(以下、1,000円カット)に二極化しています。実際に美容院を辞めて1,000円カットとして新オープンする店もあるほどです。では、1,000円カットが美容院よりも儲かるのか?そのカラクリを原価計算から紐解いてみましょう。

二極化する美容院は、限界利益と期間損益の関係性を整理する事で儲かるカラクリが見えてきます。美容院を辞めて1,000円カットとして新オープンしたお店の状況を比較すれば分かり易いです。

仮に美容院の頃の限界利益はカット代4,000円に対してシャンプー等の材料費が200円で3,800円、1,000円カットはカット代1,000円に対して材料費は100円で900円とします。お客さん1人に対する限界利益は美容院が圧勝ですが、ここに期間損益という視点を加えると状況が変わります。美容院の頃は1人に対して平均60分(洗髪~カット~マッサージ)かかるので1日6人のお客様でしたが、1,000円カットは平均10分(カットのみ)なので1日40人のお客様に増えたとします。1日8時間(480分)の営業時間の使い方を考えれば1,000円カットのほうが効率的です。

この効率の良さは固定費の負担に大きな差が出ます。設備と人員は変えずに店舗形態だけを変更したとすれば固定費は同じです。仮に月々の固定費が24万円だとすると、1カ月25稼働日で8時間働くとすれば1分あたりの固定費は20円(24万円÷25日÷480分)となります。1人あたりの固定費は、美容院の頃は1,200円(20円×60分)でしたが、1,000円カットにすると200円(20円×10分)に減ります。

限界利益から固定費を差し引いた利益ベースで比較すれば、美容院は1人当たり2,600円(3,800円-1,200円)、1,000円カットは700円(900円-200円)となり、1日あたりの利益は美容院が15,600円(2,600円×6人)、1,000円カットは28,000円(700円×40人)となります。

それぞれを1カ月という期間で比較すると美容院の頃の客数は150人(6人×25日)、1,000円カットは1,000人(40人×25日)となりますが、この来客数で固定費24万円は回収出来たのかを検証してみましょう。

1人当たりの固定費に来客数を考慮すると美容院は18万円(1,200円×150人)、1,000円カットは20万円(200円×1,000人)となるため、未回収の固定費は美容院のほうが多くなってしまい利益を圧迫します。1カ月あたりの利益は美容院の頃が33万円(3,800円×6人×25日-24万円)、1,000円カットが66万円(900円×40人×25日-24万円)と、限界利益の関係性とは逆転し、なんと期間損益は倍増しました!!この前提であれば1,000円カットのほうが美容院よりも儲かると言えます。

この期間損益の違いは時間の使い方の違いです。美容院の利益が少ない理由は売上に直結しない時間の多さにあります。価値は生まなくてもコストは一方的に生じます。商品の限界利益では無く、時間に対する限界利益をいかに最大にするか?是非、自社に置き換えて検討してみてください。(文:和田仁支)

【機械設計業の原価計算】この設計はこの業者にしか頼めない!と付加価値を感じさせれば勝ち

今回は、機械設計業の原価計算を取り上げます。

愛知県は自動車関連の企業が非常に多く、その1つに機械設計業があります。業務内容としては、他社からの注文を受け、CAD(Computer Aided Design :コンピュータ支援設計とも呼ばれ、コンピュータを用いて設計をすること)を用いて図面を引く仕事です。なお、自動車の機械設計業の業態は派遣業のようになっており、大手自動車メーカーの設計部門に人材を派遣する形で従業員を駐在させ、設計部門への対応がすぐに出来るようになっています。

では、この自動車の機械設計業を原価計算の視点で見たときに、発生する費用は何か?主に労務費のみです。CADの保守費用等はかかりますが、工数×賃率が原価の大部分を占めます。大型の設備投資が頻繁におきるワケでも無く、その原価計算は非常にシンプルです。シンプル過ぎるため原価管理が重要になってきます。機械設計業の注文の受け方は、1つのプロジェクトに対して『時間当たり作業料×見積工数』で決まります。時間当たり作業料は取引先との折衝によって決定されることも多く、自社でコントロール出来る部分とは言い難いです。

しかし、通常の業種と違って取引先にとっての機械設計業は、内部の機密情報を取り扱う取引相手であり、その信頼関係は通常の取引相手とは一線を画します。そこで、この作業料には一定の利益が考慮されており、見積工数さえ読み違えなければ利益が出る仕組みとなっています。見積工数通りに実施して利益が出るのであれば、提示した見積工数よりも少ない工数で効率的に実施出来ればもっと利益が出るのは想像出来ます。

この見積工数のベースとなるのは、過去のプロジェクトです。逆手にとらえれば、自社で技術革新をし、工数50%減が達成出来たとしても見積工数は過去のプロジェクトベースのままです。ここに勝機があります。この見積と実態の差で利益を生む事が出来るのです。実際には、見積工数を上回る取引も存在するので①黒字取引②改善して黒字取引③改善成功すれば黒字取引④赤字取引の4つに分けて管理する必要があります。工数管理が利益を生む機械設計業は、③をいかに多く把握する事が出来るかが利益獲得の鍵です。どれ程の工数を投入すれば、どれぐらいの改善額となるのか?それぞれの見積投下工数と影響額を把握し、適切なタイミングで実施して行けるように常に準備しておく必要があります。

今回の考え方は、通常の製造業にも適用できます。毎年ある取引先との価格協力(コストダウン)に対して、いかに提示する原価と実際の原価に差をつける事が出来るか。材料費、労務費、経費の側面から自社のコントロールで大幅削減が出来る部分を常に探し出すようにして下さい。そんなもの発見できない!という先は、いかにしてそこを創るかを検討しましょう。(文:和田仁支)

【結婚式の原価計算】粗利益率50%の仕組みと業界事業!

今回は、結婚式場の原価計算を取り上げます。

まずは、結婚式場を取り巻く環境を把握しましょう。少し古いデータですが、2010年の国勢調査では生涯未婚率(50歳で1度も結婚した事のない人の割合)は男性が約20%、女性が約10%。なんと50歳男性の5人に1人、女性では10人に1人が結婚したことがない!ということです。これは4年前のデータなので、今の結婚式場運営業界はますます厳しいと想像出来ます。また、長期的には少子高齢化・非正社員増加で結婚市場の縮小は避けられないと考えられ、競争が激化している側面もあります。他社との差別化をいかにして図るかが各社の課題であり、サービス内容の充実や新設備による目新しさ、広告による知名度の向上に一層力が入っています。

そんな結婚式場の原価率はどれほどなのか(この原価には、材料費と経費を含み労務費は除きます)?結婚式場の原価率は約40~50%と言われています。つまり、粗利益率50~60%です。ここには高利益率になる仕組みと高利益率にならざるを得ない事情が存在します。

高利益率になる仕組みは、結婚式場で提供される料理で考えれば理解し易いです。結婚式は人数が事前に決まっているため、複数の結婚式分の材料をまとめて仕入れる事によって調達コストが削減出来、かつ、人数分の料理を作ればよいので在庫が発生しません。必要なものを必要な量だけ安く入手する仕組みが出来上がっています。高利益率にならざるを得ない事情は、一般的に週末勝負だからです。飲食店が1週間に7日稼働するのに対して結婚式場は約2日です。1週間で業績を考えれば、平日に発生した費用も週末でカバーする必要があるため、利益率を高くせざるを得ません。最近ではキャンドルと夜景の演出で夕方から行うナイトウエディングも登場し、結婚式の時間帯が広がりました。結婚式場としては、週末に1組でも多く挙式をしたいので、新しい市場の開拓という意味でこのナイトウエディングは成功し、同じ境遇にある様々な結婚式場がこの新市場に参入して盛り上がりをみせています。また、冒頭にも記載しましたが、他社との差別化が各社の課題であり、設備投資を頻繁に実施し、アピールし、広告を打つ必要があります。受注総数約650台だったあのピンククラウンを結婚式場が購入したとディーラーから聞いた時に私はとても納得しました。結婚式場が欲しい要素である差別化・話題性・高級感を兼ね備えた車はそうそうありません。もちろん設備投資を実施すると、維持管理にも費用がかかるため、式場を自前で持っているような業者は総じて固定費割合が高いと考えられます。料理や花である変動費割合を抑えることによって、限界利益を多く獲得し、固定費を負担し、残った利益を次の投資に充てているのが結婚式場の現実です。

設備投資が多く、固定費割合が高い業態は他にもたくさんあります。皆さんの知るディズニーランドもその典型ですが、実はパーク運営の90%がアルバイトであり、曜日・季節について固定費と思われがちな労務費を大幅に変動させて対応しています。この業態では、変動費の改善、又は、同じ設備の利用率を高めることが業績アップの鍵ではありますが、新しい改善や利用率を高める活動はすぐには実施出来ません。しかし、自社の差別化要素を残したまま同じ境遇にある他社への追随を実施する事によって、容易に実施出来る可能性もあります。自社の業界だけに囚われず、同じ業態の別な業界動向にも反応できるよう目を光らせましょう!(文:和田仁支)

プロフィール

名古屋の原価コンサルタント 和田仁支

Author:名古屋の原価コンサルタント 和田仁支
ブログタイトルにある“無双”とは、唯一無二という意味です。

企業も人も十人十色。全く同じ会社は世界に二つと存在しません。そして、御社の原価も全く同じものは存在しません。


まさに“原価”“無双”です。


そんな原価の計算・活用・管理に役立つ情報を私の感性でお送りします!!

<経歴>
高校生の回転寿司アルバイトで年間給与100万超。売れるネタと儲かるネタが違う事を知り、企業経営に興味を持ち税理士を目指す。会社組織を知ろうと新卒でトヨタ系上場企業に入社。税務を希望するも畑違いの「原価担当」となり、入社早々会社組織の理不尽さを体験。しかし、現地現物主義という理念が性に合い、1ヶ月の半分以上を現場に通い、人・モノ・設備の流れを原価に変える力を身に着ける。現在は名駅(柳橋市場の近く)にある税理士法人の一員として、中小企業経営者の支援をする傍ら原価コンサルタントとして執筆・研修・原価管理導入支援コンサルを行う。

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